内見時に足を踏み入れると同時に物件の特異性にほれ込み始まった「LOBBY(ロビー)」のプロジェクト。

物件そのものが持つ独特な魅力を最大限発揮することを第一優先に、物件主導で業態やデザインを練り上げた。

そうして生まれた業態コンセプトが「ストリートバー」だ。居酒屋とオーセンティックバーの中間に位置する業態をイメージし、「誰でも入りやすい空間で、いつもより楽しくておいしいお酒に出会える場」を目指した。

入り口付近のフロアはあえて床材を貼らず、荒々しい捨てコンクリートとし、基礎状態をそのまま露出させた。入り口のサッシを隔てながらも、外と地続きになった印象をつくることで内外の境界線をあいまいにし、入りやすさを演出している。

奥の個室につながる壁の壊れた形状は意図的につくったのではなく、借りた当初の状態を残した。

壁を伝い隣の物件へとつながるコード類も、隣に入居するラーメン屋が使用する電気設備に関係しており、構造上移設ができないものだ。意図的につくろうとすると違和感を生み出しかねない形状や要素が、過去の産物として自然にそこにあることで、来店客が空間の背景に思い巡らすトリガーとして機能している。

店内は、「ホテルのロビーのように、色々な人が介在し、肩肘張らず、思いおもいの使い方ができる場所」を目指し、多用途に使える客席を用意。

カウンターを中心に、ベンチやテーブル席、奥には大人数が着席できる半個室も備え、シチュエーションに応じて使い分けられる空間になっている。

業態、空間設計共に「セオリー外」のことに挑戦した結果、普段バーに行かない人々も集まる新しい空間をつくり上げることができた。