1店舗目の「LOBBY」ができて早3年。
事業拡大に伴いスタッフの数も増え、事務所が手狭になってきたそのタイミングで、この物件と出会ったことが本プロジェクトの始まりだった。

元は木賃アパートをリノベーションした和風居酒屋。
大規模な木造空間は、柱や隠しロフト、下階に隣接するテナントなど、極めて複雑な物件であった。何より玄関アプローチは路地からさらにセットバックした我々らしい導入口。自社らしい物件の魅力とポテンシャルに惚れ込み、3店舗目兼新オフィスの計画が練られた。

今回も「LOBBY」や「nephew」と同じく、その物件にしかない魅力を自分たちなりに解釈し、最大限引き出す空間を目指している。3店舗目となる「Hone」という名前は、研ぐ、磨くといった意味で、未体験の経験から自身のセンスを磨く、感覚を研ぎ澄ますといった意味が込められている。その上で空間は、未体験かつ、なになにらしいといった形容しがたい空間を意識した。

1Fは円弧のカウンターでバーとキッチンのライブ感が支配している。タイルカウンターを中心にフローリングやテラゾーの土間、照明や吹き抜けまで同じ円の中心とし、一体感のある空間とした。2Fはどの席もまったく違う体験がすることができよう、一席一席違うマテリアルやカラーを用い、いわゆるハズレ席がないよう、すべての席が魅力的で滞在したくなる席を目指している。

1Fと2Fを繋ぐ階段室は、幾何学なウッドパネルや天井によって、2Fへの期待感や非日常を感じられる意匠とした。階段途中にある大きな開口が、2Fの雰囲気を醸し出し、自然と活気を感じ取ることができる。

下階との連続性を意識した要素は2Fのカウンターの天板にも見られる。それは中央を吹き抜けとしたガラス天板である。下階の人の動きを感じながら別空間で過ごす時間は、様々な想像を駆り立てるかもしれない。実際に、提供される料理はガラス丸テーブルの下で盛り付けられ、2Fにサーブされることになる。

その他には、ダウンライトやスポットライトといった基本照明をなるべく使わず、壁照明をベースに明るさを取ることを意識した。建物の構造が複雑かつ整形されていない点から、より煩雑な設えを避けたっかったという意図である。すべて調光の壁照明とアクセントであるペンダントライトが、空間全体をぼんやりと照らす。バーカウンターの上は、ミラーの間接照明が特別な空間を演出し、2Fバーカウンター庇のミラーや1Fカウンターの巾木など天井と壁を曖昧とする効果を狙った。

これらの要素がコンパクトかつリズミカルに混ざり合うことで、既視感のない未体験空間となり、訪れた人の感性に少しでも刺激を与え、新たな食体験となることを願う。